地産地消インタビュー vol.8 森屋賢さん 第2部

三鷹市北野で様々な野菜を育てている農家さん、森屋賢(さとし)さんへのインタビューの後半です。インタビュー・記事執筆はゆきちゃんが担当してくれました!


『畑がなくなってしまう危機は税制にあり』

――農家をする中で大変だなと思うことはありますか?


森屋さん:大変なことは、畑をなくさないようにすることが都市農業では一番の問題。

相続などで農地が持って行かれてしまいます。

高い相続税を払うために土地を売らなくてはいけないのが現状なので、どうにか変えていかないといけない。どんなに周りの人に都市農業がいいねと言われてもなくなってしまう可能性があるので。


――法律を変えないといけないのですか?


森屋さん:そうです。税制を変えなくてはいけない。

国としても税金を集めないといけないからあるところから取るということになるんだろうけど。これはなかなか難しい問題です。


――農家さんが畑をしていた土地を更地にして売ったり貸したりしているということを聞いたことがあります。農地を畑にするよりも、マンションなどにして人に貸すなどしたほうが、お金ははいるのですか?


森屋さん:そうですね。農業だけでなく、不動産をやっているのはなぜかというと、税金を払うため。農産物の単価は相場が決まっていて、いくら税金を払わないといけなくても、10倍の値段では売れない。だから東京は人も多いし、不動産業でもしようということで始まったんだよね。そもそも、決して楽をしたいか土地を売っているのではなくて、あくまで税金を払っていかないといけないからやり始めたことなんだよね。


――農業収入だけではやっていけない現状なのですね。


森屋さん:生産緑地法といって、畑として土地を保つならば、税金が猶予されて、宅地に比べれば税金が少なくなる制度もある。しかし、生産緑地といっても手放しに喜べるものではなくて、生産緑地に申請した土地では死ぬまで畑として保っておかないといけないんだ。税金が「免除」ではなく「猶予」されるだけだから、畑として保っておかないと、その分遡って税金を払わないといけない。人間だから歳をとれば畑作業を続けるのは困難になる。後継ぎがいる家ならいいけど、いなかったら死ぬまで畑として保っておくというのは難しい。そうなると、税金ばかり払わなければならなくなって採算が取れない。だからやむなく土地を手放す人が少なくないんだよ。

でも改善している面もあって、平成27年4月にできた都市農業振興基本法によって、都市農地も地方の農地と同じように保全すべき対象として認められるようになった。つまり、東京でも、地方と同じように国から補助をもらえるようになった。これでだいぶ状況は良くなったけど、相続税に関しては、変わっていないから土地を売っていかないといけない状況はまだ変わらないんだ。


『農業の魅力は人と地域と繋がれること』

――では、農業の魅力は何だと思いますか?


森屋さん:農業を介して、人や地域とつながることができることかな。

農業の新しい可能性を結構みんな感じてくれていて、色々な人が農家をしている僕らと関わってくれるようになった。こんなに人が集まって、地域と関わる仕事はなかなかないから、そこがすごく農業の魅力だと思う。特に最近は農業や地産地消というものがより求められてきていると感じる。特にコロナが流行りだしてからは、スーパーでの密を避けるために庭先販売に来る人が多くなって、中には「みんなの直売所MAP」といってウェブ上に直売所マップを地域のみんなで作り上げていこうという動きもある。「チリンチリン三鷹」という地域のものを地域の人に配達する地域版Uber Eatsのような団体も立ち上がっている。さらに、「ミタ帖」という地域通貨も作ろうとしてるんだ。いろんな動きに一気に巻き込まれているよ(笑)


――確かに最近だとウェブのMAPの方が使い慣れているので便利ですよね。「チリンチリン三鷹」や「ミタ帖」の動きも地域での助け合いの精神を形にしていて凄いですね。


みんなの直売所MAP(仮登録版)


チリンチリン三鷹



『「食べる人」と「作る人」を超えた関係へ』

――地産地消への思いはありますか


森屋さん:「地産地消」大事!!!笑

地産地消って三鷹だけの括りでも大切だけど、日本全体で見ても大切。

コロナの状況になって改めて思ったけど、マスクもそうだったように輸入に頼っていると急な対応ができなかった。食べ物も同じで、輸入に頼ってばかりだと緊急事態が起きると対応ができない。日本の人が食べるものは日本で確保できるに越したことはない。さらに言えば三鷹で食べ物が賄えるのなら、三鷹の人が作ったものを三鷹の人が食べるということが一番良いと思う。そこからまた人と人とのつながりもできるしね。ただ単に「食べる人」と「作る人」という関係だけじゃなくて、もっと深いつながりができる。付随してフードロスが減る、輸送している間に大気汚染しないなどの良いこともある。


――繋がりができると言うのも大きいのですね。チリンチリンみたかのような動きも元から「地産地消」の動きがなかったら実現してなかったかもしれないですよね。


森屋さん:きっとできていないね(笑)チリンチリン三鷹は、三鷹にある資源で助け合って行こうよというものだから。


――「ICU地産地消プロジェクト」に関わってくださっているのはどうしてですか?


森屋さん:結局人だね。地産地消に関わっている色々な想いを持って活動している学生がいるから。人がいて、その人たちに思いがあって、その思いを応えることができる僕らがあるから、じゃあ一緒にやって行こうということで色々一緒にやっている。できることは協力していきたい。


――ありがたいです。学生という立場は、ずっと三鷹にいるわけじゃないから私たちがつっこんでいいことなのかな?と思っていました


森屋さん: I C Uが好きで三鷹が好きで、農業が好きでということであれば誰だろうといいと思う。大学にいたころは考えたことなかったからすごいなあと純粋に思っているよ。


『地域の人に必要とされるために』

――コロナの影響で何か変わったことはありますか?


森屋さん:体と体の距離を離さないといけないとなると、精神的な繋がりはより必要なんだなと感じた。チリンチリン三鷹のように地域のいろんな人の気持ちが繋がってできた活動に農家として関わって改めて農業のあり方を考えさせられた。

これからは農家として、J A青壮年部として、地域の人の要望(声)にどうやって答えるかが大切になると思っている。

今までもいろんな形で地域とつながってきたけど、これまでとは違うニーズも出てくるかもしれない。これまで都市農業に興味のなかった人もこっちを向いてくれようとしているから、またそっぽを向かれないようにしていかないといけないなあと思う。


――さらに森屋さんの手帳が埋まりそうですね(笑)(森屋さんの手帳はすでにぎっしりと埋まっている)


森屋さん:必要とされているとしたら、周りの人が見ていてくれたんだな。以前から思っていたことなんだけど、やったことが10年後ぐらいに仕事として出てくる。

20代の時にやってきたことが30代に出てきて、30代の時にやってきたことが40代(今)出てきている。40代(今)やっていることがきっと50代に出てくる。だから、やれる時に、一生懸命やることが大事だと思っているよ。


『三鷹が土台』

――最後に、森屋さんにとって地域とはどのようなものだと思いますか?


森屋さん:これは土台だね。今の自分の土台になっているのは三鷹の地域。

今までやってきたことを生かそうとしているだけで、本当に三鷹市に育てられている。


――なるほど。土台がないとなかなか積み上がらないですよね。自分というものができてこない感じがします。


森屋さん:幼少期から地域のものを食べていたり、地域の人たちとの繋がりがあった。

周りは地域の人ばかりだから、同じような人がずっと見守ってくれていたし、大きくなってからも一緒に活動したりしている。「チリンチリン三鷹」とかって、いきなり他の地域でできないと思う。その土地のいろんな人のつながりがあるから、三鷹という土台があるからいろんなことができる。玉木さんも知り合い増えたでしょ?(笑)

三鷹は、いろんな興味がある人を受け入れる土壌だからさ。

(完)

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森屋さん、本当にありがとうございました!

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ICU 地産地消 -Make&Consume Local- Project

ICUから地域の方々とつながっていくことはできないだろうか…?ということで、始まったのがこのプロジェクト。地産地消の取り組みを通して、心から豊かな生活を築いていきましょう!!