地産地消インタビューvol.7 金子晃さん

地産地消インタビュー第7弾!今回は三鷹オーガニック農園の金子さんにお話を伺いました。

1. どんな野菜を育てていますか?

私の農園ではスーパーで売っているような F1 種(その品種限り有効、種を残すのには適さない種)の野菜ではなく、もともと植物として自生していた野菜の固定種、在来種を受け継いで育てています。意識的に単一の野菜を繰り返し生産しているわけではありません。なので、特定の、この野菜を...というものはないです。ただ、年間を通して収穫できるものとしては大根、ルッコラ、イタリアンチコリなどの葉物野菜や、じゃがいもなどがあります。

2. なぜ農業を始めたのですか?

私は農家の実家に生まれました。江戸時代に私の家は薬屋を生業としており、その一環として漢方の薬草の研究、栽培もしていました。次第に薬草の栽培から様々な植物、作物の栽培をするなど試行錯誤を重ねる中で有機野菜の栽培にも力を入れるようになり、その事業を受け継いでいます。

3. 農業の魅力はなんですか?

一言で言えば「工夫をすれば面白い」ということです。農薬を用いて、作物を繰り返し生産することだけが農業ではありません。私の推し進めるオーガニック農法では細かい作業や育て方の違いによって作物の味が様々に変わります。それゆえにオーガニックでは安定した生産が容易ではありません。しかし、工夫さえすれば、作物の可能性を大きく引き出せることができます。簡単な工夫だけではうまくいかないことが多いですが、挑戦できることで様々な活路が見出せることが魅力だと思います。

4. 農業の現状、何が大変?これから変えていかないとなって思うこと。

そもそも都市農業は肩身の狭い商売のように思います。私のようなオーガニック農家は行政をはじめ、人々には理解が及んでいないという面があります。画一的な生産方法だけが農業として認知されてしまうと、ますます魅力がなくなってしまいます。これからはオーガニック農法をはじめ、様々な農業のあり方が認められるようになってほしいと感じています。 そうすることで農業が面白い仕事であると認知されて、新しい担い手を呼び込める可能性があります。そういう環境を作っていくことが私の課題です。

5. 地産地消への思い

作物に対して、どこに着眼点を持つかは人それぞれですが、私にとっては「鮮度」がとても大事だと思います。学校給食に提供する場合には、「調理のしやすさ」(野菜の大きさ、形) を求められたりします。有名なレストランであっても「鮮度」はそこまで意識されていないようです。よって鮮度に着眼点を持つ人は主婦のみなさんを除いて、少ないのです。しかし、 私は食において「効率さ」よりも「おいしさ」が大事です。そして、そこで不可欠なのは「鮮度」ではないでしょうか。そのためには収穫されたものをいち早く調理し、食べてもらわなければなりません。地産地消は「鮮度」「おいしさ」の確保の点で大事なことであると思います。地産地消プロジェクトの野菜販売の時はいつもとれたての野菜を提供しています。多くの人に「鮮度」に着眼点を持ってもらうためにも地産地消は欠かせないものです。

6. 地産地消プロジェクトに関わってくれるのはどうして?

プロジェクトに関わる以前に、私の農園でとれた野菜を寮で集団購入してくれる ICU生の方がいました。そこからプロジェクトに関わり、ICU生のみなさんとの関わりも増えてくると、オーガニックにこだわりを持つ学生のみなさんが多いことを知りました。オーガニック野菜を生産する私にしてみればとても嬉しいことで、ICUで野菜を売ることがやりがいの1つになっています。また、プロジェクトのメンバーとも良い関係を築けているのも大きな要因ですね。

7. コロナの影響で何か変わったことはありますか?

私が納品していたレストランからの注文がほとんどなくなってしまいました。個人で注文してくれる方はいるのですが、個人で 10人分ほどになるレストランからの注文がなくなってしまったことで損失は大きいです。また、知り合いのレストランオーナー、シェフの方々が⻑引く自粛の影響で経営難に陥り、失業しています。私が知っているだけでも 3、4人で、全体ではもっと多いことでしょう。そこで、私から提案があります。私の農園でシェアキッチンを作って、失業してしまったシェフのみなさんにオーガニック野菜を使った料理教室を開催したいと思っています。なぜなら、安全なオーガニック野菜を求める消費者がいるからです。オーガニック野菜をはじめ、各地の伝統野菜には美味しく食べるための独特な調理方法があります。それらを適切に教えてくれるシェアキッチンはシェフたちと安全な野菜を求める消費者との間で win-winの関係を築けると期待しています。この構想を夢で終わらせてしまわないように、この状況を理解し、シェアキッチンを期待する消費者の方々にクラウドファンディングのお手伝いをお願いしたいと思っています。

8. 地域とは?(三鷹とは?)

私は農家として、主に地域貢献をしているわけではありません。町の中でのオーガニック農園は「何か面白いことをしている農家だなぁ」と思われる、「ガラパゴス」のような存在でしょう。誤解していただきたくないのは、そこで地域の人々を敬遠しているわけではないということです。私はオーガニック農法にはこだわりがあります。しかしながら、地域の中でオーガニックへの理解・関心が進まず、様々な場面で厳しい意見をいただくこともあります。ただ、「安全」、「美味しさ」という観点からオーガニック農園は不可欠であること、またそれを期待してくださっている消費者の方々がいます。私はこれからも地域の方々と相互理解を深め、無農薬の良さを伝えていきたいと感じています。そのことが私にとっての地域貢献と感じています。

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ICU 地産地消 -Make&Consume Local- Project

ICUから地域の方々とつながっていくことはできないだろうか…?ということで、始まったのがこのプロジェクト。地産地消の取り組みを通して、心から豊かな生活を築いていきましょう!!