地産地消インタビューvol.6 吉野均さん

地産地消インタビュー第6弾!!今回はキウイをメインに生産をしている吉野均さんにお話を伺いました。

(写真上:吉野均さん)

Q1 キウイという、それまでマイナーだった果物を生産しようと思ったとき、ためらいはなかったのでしょうか?

 妻の祖父と父が生産を始め、私は婿入りで結婚をして、サラリーマンを辞めて就農しました。父曰く「最初は周り全員が手探り状態だった。ニュージーランドや国内への視察研修、勉強会などを通して栽培技術を全員で向上させていった」とのことです。


Q2 農業の魅力、やりがいを感じることは何ですか? 具体的な経験などもあれば、お訊きしたいです。

 世間ではキウイ=「酸っぱい」というイメージがあります。実際、私も小学校の頃給食で食べたキウイが酸っぱかったのを覚えています。キウイは収穫後バナナなどと同様に「追熟(ついじゅく)」 という処理を掛けます。追熟処理をすることで果実が柔らかくなり、糖度が上がります。 私は、小学校以来、自分からキウイを求めて食べたことがありませんでした。スイーツなどに付いてくるのを口にするくらいで「飾り」というイメージでした。 結婚する前に父から渡された1つのキウイ、これが今までの概念を覆しました。キウイ =「甘い」になりました。この経験を多くの人にして欲しいと願って仕事をしています。その思いが市⺠との関わりを通して少しずつ実現できています。 「美味しかった」という言葉が私のやりがいに繋がっています。


Q3 地産地消への思い、今後の展望があれば教えてください。 

⇒「半径500mの共生」を目指す。

 三鷹、ましてや私が住む三鷹市野崎周辺でも自園のことを知らない方が沢山いるのではないかと考えています。地域と共生することで、地域が活性化し、都市農業の理解も深まる。文化を築き上げていければ後継者への道標ともなる。自園だけが輝くのではなく、地域が盛り上がることを考え、結果として自園の収益が上がることを目標としています。そのためにも、収穫体験ニーズに対応したり、自園で畑を開放するとともに、地元飲食店、菓子店と協力したりして地域住⺠の認知度を向上させていきたいです。


Q4 地産地消プロジェクトに関わってくれるのはどうしてですか? 

 「インプット」と「アウトプット」があるからです。失礼な表現をしますが、一般的な農業体験、収穫体験は体験者にインプットされて終わりです。SNS などで発信していただくという意味ではアウトプットと表現してもいいかとは思いますが。。一方で、プロジェクトの皆さんは市⺠の方々、大学、農家と関わっていくなかで、インプットして終わりではなく、それを社会問題と照らし合わせて、学びとして理解して、しっかりとアウトプットしてくれています。 それが我々にとっても学びとなります。 開催延期となった「勇気をもって有機会議」(※2020年8月26日にオンライン開催 )は良い例だと思います。農薬使用、不使用の考えは生産者にとっても、消費者にとっても違います。さまざまな視点で意見を交わせればと思います。それが参加者全員の学びとなり財産となると思います。

 また、人の入れ替わりが多く、活動が⻑続きしないこともある学生団体であっても、我々とつながりを持ち続けていてくれることが本当にありがたいこと だと感じています。

Q5 安さを売りにしている果物が多い中で、品質の良いキウイを売ることはアドバンテージがないように思ってしまいます。ただ安いだけの果物に対し対抗できる点はあるのでしょうか?

 果物に限らず安さを売りにしている商品は安さを求める消費者に届くと思います。食品スーパーで相場を確認することはありますが、だからといって当園のキウイの価格を変えることはしていません。対抗しようとも考えていません。当園で購入される方は安さ以外の価値(近所で売っているから、親しい生産者だから)に期待してくれているのだと思います。


Q6 吉野さんの今後の生産活動の計画や夢を教えてください。 

⇒当園では 3 種類のキウイを栽培しています。

・レインボーレッド...酸味がほとんどなく糖度 17〜20 度。断面の中心部が赤色。

・東京ゴールド...小平市で生まれの品種。糖度 15〜17 度。中身が⻩ 色。 ※上記2種は貯蔵性が低く、保存に適していないため生産量が少ない

 ・ヘイワード...一般的なキウイ。糖度 14〜16 度。甘みと酸味のバランスが良い。


(写真上 1枚目:レインボーレッド 2枚目:東京ゴールド) 

 キウイは緑色というイメージから⻩色に変わりつつあります。ブドウやミカンを思い浮かべてもらうと分かりやすいのですが、今果物に求められるのは「糖度が高くて酸味が少ないもの」です。「皮ごと食べられる」「すぐに食べられる」というのも大きなポイントで、ブドウのシャインマスカットが人気なのはそのおかげです。またスーパー、コンビニでもカットフルーツは人気です。 当園のキウイの95%はヘイワードです。一方で求められているのは残り5%のレインボーレッドや東京ゴールドなど糖度が高くて酸味が少ない品種です。いくら生産者がヘイワードをお勧めしてもなかなかご納得いただけません。 そもそもの⻩色のキウイの登場はニュージーランドのゼスプリ社が開発した「ゼスプリゴールド」 という品種です。日本では2000年から本格販売が開始されましたが、そこから一気に国産キウイの出荷量は減りました。 大産地である愛媛県、香川県、福岡県といったところではその影響も相当だったと思います。そんななか、2005 年に香川県で「さぬきゴールド」、 2014 年に福岡県で「甘うぃ」、2013 年には東京都で「東京ゴールド」と、こうした赤系、⻩色系の「ご当地キウイ」が誕生しました。これはゼスプリゴールドの脅威から自分たちが生き抜く為に努力した賜物だと思います。まだまだではありますが、消費者に国産でも赤系や⻩色系のキウイがあることを知ってもらえてきました。我々生産者は消費者のニーズを的確に捉えて、自らの農業を変化させることが求められていると思います。徐々にですが、栽培比率へ見直していき、消費者に喜ばれる園になっていきたいです。

 また、都市農業、観光農業のことを地域はじめ、多くの人々に親しいものとして接してもらうことによって、農地の大切さを知ってもらいたいです。「農地を残そう!」という声が広がっていくことを願っています。今はそのために地域のつながりを通して小さな活動を積み重ねています。

Q7 コロナの影響で何か変わったことはありますか? 

 園の前に営業自粛要請の出ていないホームセンターがある影響か客足が例年に比べて良いです。 また、流通過程で不特定多数の手に触れる食品スーパーと違い、生産者しか手に触れていない、そして自販機も人が密集しないことで安心して購入できているのではないかと思います。

Q8 吉野さんにとって、地域(三鷹)とは? 農家になってから地域の関わり方に変化はありましたか?

 観光するとなれば、観光名所や宿泊施設が少なく、滞在時間は短いかも知れませんが、住むには高いビルもなく、緑地が広がり四季を感じることができる魅力的な町だと思います。私は農家になってからは必然的に地域の活動に携わるようになりました。それまでは埼玉に住んでいたのですが、地域は住んでいる町という印象しかありませんでした。結婚して三鷹に来てからは農家として、JAの一成員として地域に住む知り合いが自然に増えていきました。そうすることによって消防団の誘いを受けたり、教育機関から食育の一環として招かれたり、地域の子ども食堂に関わったりと様々な場所と繋がりを持つことができました。

(Interviewer: C.N)


0コメント

  • 1000 / 1000

ICU 地産地消 -Make&Consume Local- Project

ICUから地域の方々とつながっていくことはできないだろうか…?ということで、始まったのがこのプロジェクト。地産地消の取り組みを通して、心から豊かな生活を築いていきましょう!!